人民大衆第一主義〜コロナ禍で見えてきたもの〜

新型コロナウイルスが流行し始めて、はや1年と半年が過ぎた。その間、世界中で各種感染対策、経済対策が打ち出されていたが、それらが真に国民のためのものであったかという点については、必ずしもそうではない。

日本を例に挙げてみると、国民に対するマスク配布に始まり、度重なる緊急事態宣言による飲食店等に対する営業時間短縮要請、補助金支給などが行われたが、いずれも感染抑制、経済支援という点において、決定打に欠ける政策であったといえる。

そして、コロナ禍で国民に自粛を要請しておきながらも、政治家は会食を行い、補助金による支援を始めたかと思えば、官僚による不正受給が発覚する。

緊急時であるがゆえに、政府の手腕が問われる絶好のチャンスであったが、結果としては後手後手で国民の生活に則していない対応を行うに至った。

こうした日本政府の現状を踏まえて、なにが1番の問題点なのかを考えた時、当然のことではあるが、国民のための政治がなされていないことだと感じた。

そこで今回は、朝鮮で実行されている理念「人民大衆第一主義」を参考にして政治のあり方について考えたいと思う。

「人民大衆第一主義」とは、「すべてを人民の為に、すべてを人民大衆の為に依拠する」という朝鮮における政治の基本理念である。そして、朝鮮では、この理念を実現する為に「以民為天」「一心団結」「自力更生」という3つのスローガンを掲げている。

まず、「以民為天」とは、文字通り、「民を以って天と為す」ということである。これは、政治を行う指導者や党が人民を「天」と為し、政治を行う者が積極的にその人民の中に入ることで人民の願いや悩みを理解し、その上で人民に尽くすということを意味する。

つまり、政治を行う者は、国民(人民)を第一に考えて行動することが重要であり、また、そうすることで様々な困難に打ち勝てるという考えである。

次に、「一心団結」であるが、これは、指導者・党・人民が心を1つにするというものである。上記の「以民為天」では、人民を天と為すように、人民も指導者や党を信頼することが重要であるということである。

「一心団結」と言葉だけで聞くと、少しイメージしづらいかもしれないが、そういった方には、是非、朝鮮労働党第8回大会の慶祝大公演のビデオをみていただきたいと思う。

最後に、「自力更生」である。現在、朝鮮では、米国などの資本主義国から各種制裁による圧力を受けており、その上さらに、自然災害や新型コロナウイルスの影響で厳しい状況に置かれている。そんな中でも、自主の道を打ち立てることで資本主義国に従属せず、これら困難に立ち向かい、力強く前進することを表す理念である。

そして、「自力更生」は、社会主義的計画経済を実現する上でも重要な理念である。社会主義を実現するためには、他国の影響を受けないことが前提となるが、そのためには経済的・思想的に自立する必要がある。そうした意味で、「自力更生」という理念は朝鮮の根本になる理念であると言える。

これらの理念を実現してこそ、人民大衆を第一とする政治が可能となる。

このように本来であれば、政治家は国民のことを第一に考えることが当然の務めである。しかし、ニュースや新聞等の報道では、私利私欲に囚われた者による不正や改竄に関する事件をよく目にする。これは自身の上に立つ者に忖度する事ばかりに意識が行くことが原因であり、真に国民のことを考えているという状況ではない。

朝鮮では、こうした考えを善しとせず、なによりもまず国民のことを考える姿勢を重視している。

初めにも述べたが、コロナ禍において政治の役割が試される場面が多々あったと思う。しかし国民の期待には応えることはできなかった。

そんな時代だからこそ何が問題点で何が必要なのものか見えてきたものがあるのではないだろうか。

(文:愛媛現代朝鮮問題研究所)

続きを読む